転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


225 お爺さん司祭様は天才なのかもしれないね 


「司祭様、お帰りなさい!」

「うむ、ただいま」

 僕はうれしくなって、すぐに台所にある扉から外に出て、お爺さん司祭様にお帰りなさいの挨拶をしたんだ。

 そしたら司祭様はにっこり笑ってただいまって言ってくれたんだけど、

「こら、ルディーン。お昼ご飯がまだ終わって無いでしょ。ちゃんと食べなさい」

 ご飯の途中で飛び出したもんだから、お母さんに怒られちゃった。

 失敗、失敗。

 お母さんが僕のためにがんばって作ってくれたんだもん、ちゃんと全部食べないとダメだよね。


 僕が残りのご飯を食べるためにテーブルに戻ると、もう食べ終わってたお母さんがお爺さん司祭様にお茶を出してごあいさつ。

「お帰りなさいませ。遠くまでお疲れさまでした」

「うむ、村の皆も壮健のようで何よりだ」

 お爺さん司祭様はそう言うとお茶を一口飲んでにっこり。

 でね、その後、お母さんにこんなことを言ってきたんだよね。

「ところでカールフェルト夫人。ちと聞きたい事があるのだが、よろしいか?」

「聞きたい事ですか? ええ、私にお答えできる事でしたら」

「なに、そう難しい事ではない。聞きたいのは外にある、あの石造りの物の事だ。わしがイーノックカウへ行く前には無かったと思うのだが、あれはいったい何をするものなのかのう?」

 そう言えばお爺さん司祭様、お外でもこれは何だ? って言ってたっけ。

 でもお母さん、魔道具の事を聞かれても解んないよね? そう思った僕は、大急ぎでお皿に残ったご飯をお口にかきこんだんだ。

「ああ、あれは水がめですよ」

「水がめとな? だがそれにしてはちと仰々しすぎるように、わしには思えるのだが」

「それはねえ、入れたお水をきれいにする魔法の水がめだからなんだよ」

 いっぺんにお口に入れたからちょっと大変だったけど、それを何とか飲み込んだ僕はお爺さん司祭様にピュリファイって魔法で朝と夜の二回きれいにすれば、中のお水がずっと悪くならないんだよって教えてあげたんだ。

「ピュッ、ピュリファイとな!?」

 それを聞いたお爺さん司祭様はびっくり。

 そりゃそうだよね。だって僕、こないだまで魔法陣の魔道具を作れなかったもん。

「うん、そうだよ。あのねぇ僕、今イーノックカウの錬金術ギルドのギルドマスターってのをしてるバーリマンさんって人に魔法陣の書き方を教えてもらってるんだ。でね、この魔法の水がめはバーリマンさんがお勉強に使いなさいねって僕にくれた魔法陣を使って作ったんだよ。すごいでしょ」

 だから僕、今魔法陣の勉強をしてて、それで作れるようになったんだよって教えてあげたんだけど、

「魔法陣……いや、それよりもだ。ルディーン君、君はなぜピュリファイがアンデッドによって穢された土地だけでなく、水の浄化までできることを知っていたんだい?」

 そしたらお爺さん司祭様は、それよりもピュリファイでお水をきれいにしてた事にびっくりしてたみたいなんだ。

「アンデッド? ピュリファイって、お掃除の魔法だよね? あっ、そっか。ピュリファイは神官様が使う光の魔法だもん。アンデッドに効いてもおかしくないのか」

 でもそっか。アンデッドにも効くんなら神殿じゃあピュリファイはアンデッドをやっつけるのにだけ使ってるのかもしれないもん。

 だったらお爺さん司祭様はこの魔法でお水をきれいにできる事を知らなかったのかもしれないね。


 ……でもさ、だったらイーノックカウの宿屋さんのおトイレ、どうしてるんだろう?

 僕、水の魔石でお水を作ってたら魔道リキッドがいっぱいいるから絶対ピュリファイできれいにしてると思ったのに。

 ん、待てよ。って事はもしかして!

「司祭様、もしかしてイーノックカウだとお水を水の魔石から作ってるの?」

「水? いや、大きな商隊では運ぶ荷物を減らすために魔石を使っておる者もいるが、街では川や地下水などから水が豊富にとれるからのぉ、わざわざ水の魔石から水を生み出す者はおらぬと思うぞ」

「そっかぁ。僕が知らなかっただけで、イーノックカウとかだとヒルダ姉ちゃんちの魔法の水がめみたいに魔法使いに魔力を入れてもらった魔石の乾電池を使ってお水を作ってるのかって思っちゃった」

 水の魔石で作ってるんじゃないなら、あれはやっぱり井戸から汲みだしたりして使ってるんだね。

 でもさぁ、宿のお部屋全部のおトイレを水洗にしようと思ったらお水がものすごくいっぱいいると思うんだよね。

 そのお水ってどうやって汲み上げてるんだろう? やっぱり魔法のポンプとかがあるのかなぁ?


 うちの村はほとんどのお水を川から汲んでるから、井戸はあるけど長雨で川のお水が濁った時くらいしか使わないんだよね。

 だから僕、今まで魔法のポンプを作ろうって思った事なかったんだけど、街だと川から離れてるとこもあるもん。

 そんなとこはみんな井戸を使ってるだろうから、魔法のポンプを使っててもおかしくないんだ。


 よくラノベに出てくる手で漕ぐポンプなんだけど、あれって僕は中がどうなってるのか知らないから作れないんだよね。

 でも、前世のおうちにも手でシュポシュポやるポンプはあったから、あの構造は解ってるんだよ。

 そりゃあプラスチックとかが無いからあのまんまのは作れないけど、仕組み自体は簡単だから風の魔石とかを使えば作れない事はないんだ。

 あれって上んとこをシュポシュポしてると、そこが戻ろうとする時に一方通行の蓋から空気や水を吸い込むんだよね。

 だから、その吸い上げたお水をもう一個の一方通行の蓋を使って逆流させずにもう一つの管に通してるだけなんだ。

 だから鉄かなんかであのシュポシュポするとこの代わりのものを作って、そこから風の魔石を使って空気を抜いてやればあれとおんなじような事はできるはずなんだ。

 でも、ポンプかぁ。今はお父さんやお兄ちゃんたちが、樽を持ったまま階段を上って魔法の水がめにお水を入れてるんだよね。

 でも魔法のポンプがあったら、お水を水がめの下まで持って来るだけで済むもん。

 だから僕、今度作ってみようかなぁって思ってたんだけど、

「なんと! わしが帰ってくるまでにその様な事が起こっておったのか。うむ、ルディーン君が魔法陣を使ってフロートボードの馬車を完成させてはおらぬかと危惧しておったが……4日だぞ。わしが村を空けておったのはたったの4日だ。だと言うのに、まさかこのような事になっておるとは」

 横でお母さんとお話ししてたお爺さん司祭様が、なんでかがっくりしながらこんな事を言い出したんだよね。

 そっか、フロートボードって放出系の魔法だもん。

 それなら習った魔法陣でも作れるから、後でフロートボードの魔石も作んなきゃ!

 さすがお爺さん司祭様、僕やお父さん、お母さんじゃあ絶対に気が付かなかったよ。

 やっぱりお爺さん司祭様が帰ってきてくれて、本当によかったなぁ。


 読んで頂いてありがとうございます。

 司祭様、痛恨のミス!


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